日常

2003年5月3日
昨日までつづけてきたことを
今日もつづけ今日もつづけていることを
明日もつづけるその当たり前なことに
苦しみがないと言っては嘘になるが
歓びがないと言っても嘘になるだろう
冬のさなかに春の微風を感ずるのは
思い出であるとともにひとつの予感で
昇る朝陽と沈む夕陽のはざまに
ひとひらの雲が生まれまた消え失せるのを
何度見ても飽きないのと同じように
私たちは退屈しながらも驚きつづける

2003年4月30日
逆らえぬ感情に従うがいい
それが束の間のものであろうとも
手をとらずにいられぬときは手をとり
目の前のひとの目の中に覗くがいい
哀しみと呼ぶことで一層深まるひとつの謎
生まれ落ちてからこのかたの日々のしこり
そのひとしか憶えていない黄昏の一刻の
闇にとけ込む暗がりにうつるあなた自身を
一人でしかありえぬとしても
私たちの間にはふるえる網が張りめぐらされていて
魂はとらえられてもがく哀れな蝶
だからときとしてみつめあうしかないのだが
どんな行動も封じこめられているその瞬間に
かえって私たちは自由ではないのか
慰めの言葉ひとつ浮かんでこないからこそ
心はもっとも深い水脈へと流れ込み
いつか見知らぬ野に開く花の色に染まって
大気のぬくもりと溶けあうだろう

2003年4月29日
風が息をしている
耳たぶのそばで
子供らの声にのせ
みずうみを波立たせ
風は息をしている

虫が息をしている
草にすがって
透き通る胎を見せ
青空を眼にうつし
虫は息をしている

どこか遠くで
限りなく渦巻いて
声もなくまたたいて
星は息をしている

人が息をしている
ひとりぼっちで
苦しみを吐き出して
哀しみを吸い込んで
人は息をしている

よくある話

2003年4月25日
きみは何を考えてるんだ
目をつむり
鼻をかすかにふくらませて
きみは何を考えてるんだ
ぼくのこと
それとも自分のこと
それとももっともっと他のこと
ぼくらの上に陽は輝き
ぼくらのまわりに
人々のざわめきがきこえる
だけどぼくらは
大昔のミイラのように抱き合って
それで幸せをつかむ気でいる

きみは何を考えてるんだ
ひたいに汗をかき
眉をしかめて
きみは何を考えてるんだ
未来のこと
それとも今のこと
それとも何も考えていないのか
ぼくらの上に夜が来て
ぼくらのまわりに
死者たちのうめきがきこえる
だけどぼくらは
真夏のつるのようにからみあって
それで愛をつかまえる気でいる
きみは何を考えてるんだ
きみはぼくが何を考えてるんだろうと
一度でも考えたことはあるのだろうか
忘れるな
人生を好きに送れば悔いがない
というのは間違っている

まっすぐなせん

2003年4月23日
定規をちょうだい
まっすぐ線を引きたいの
定規をちょうだい
何ミリか測りたいの
定規をちょうだい
不安で仕方ないから
もたれかけさせて
それで安心できそうな気がするの
そんな気がするの

輪郭を広げる

2003年4月17日
いかなる問題も
それを作り出した同じ意識によって
解決することはできません

ドイツの諺を思い出します
「人はみな
 自分の靴のサイズで
 物事を計る」

輪郭を定めない

2003年4月16日
人間の真の価値は
おもに
自己からの解放の度合い
によって決まる

ある真実

2003年4月1日
人間(ひと)が変わってしまうのに時間は必要無い。
が、元に戻るには時間と自覚が必要になると思う。

問う

2003年3月31日
闇に沈む月の裏の顔をあばき
青い砂や石をどこへ運び去ったの
忘れられぬ人が銃で撃たれ倒れ
みんな泣いた後で誰を忘れ去ったの

飛行船が赤く空に燃え上がって
のどかだった空はあれが最後だったの
地球上に人があふれだして
海の先の先へこぼれ落ちてしまうの

暑い国の象広い海の鯨
滅びゆくかどうか誰が調べるの
原子力と水と石油達の為に
私達は何をしてあげられるの

薬漬けにされて治るあてをなくし
痩せた体合わせどんな恋をしているの
地球上の酸素・窒素・フロンガスは
菜の花の園にどんな風を送ってるの

機関銃の弾を体中に巻いて
ケモノ達の中で誰に手紙を書いているの
眠りかけた男達の夢の外で
目覚めかけた女達は何を夢見るの

親の愛を知らぬ子供達の歌を
声のしない歌を誰が聞いてくれるの
世界中の国の人と愛と金が
入り乱れていつか混ざりあえるの

人ゴミに埋もれても

2003年3月30日
彼の性格はひどい無口
声の出し方を忘れたよう
20才まえまでは誰にも会わずに
いつも壁のそばに居た

彼の職業はプレス加工
アルミニウムを曲げてのばす
指先の色もいつしか変わって
とうに指紋はなくしてた

灰色の指先で毎日をなぞっても
数えても重ねても仕事場は流れ作業

彼が恋したのは街の女
彼を受け入れたただの女
悲しみも喜びもない時間が
遠いゆるやかな記憶

街は夕暮れにイルミネイション
彼は人ゴミにとけてしまい
この街で205人が今日生まれ
203人の死亡

灰色の指先で明日の日を探しても
夢見ても願っても仕事場は流れ作業

今日はどう?

2003年3月29日
雨にも風にも負けないでね
暑さや寒さに勝ちつづけて
一日、すこしのパンとミルクだけで
カヤブキ屋根まで届く
電波を受けながら暮らせるかい?

南に貧しい子供が居る
東に病気の大人が泣く
今すぐそこまで行って夢を与え
未来の事ならなにも
心配するなと言えそうかい?

君の言葉は誰にもワカンナイ
君の静かな願いもワカンナイ
望むかたちが決まればつまんない
君の時代が今ではワカンナイ

日照りの都会を哀れんでも
流れる涙でうるおしても
誰にもほめられもせず、苦にもされず
まわりの人からいつも
デクノボウと呼ばれても笑えるかい?

君の言葉は誰にもワカンナイ
慎み深い願いもワカンナイ
明日の答えがわかればつまんない
君の時代のことまでワカンナイ
花屋の店先に並んだ
いろんな花を見ていた
ひとそれぞれ好みはあるけど
どれもみんなきれいだね
この中で誰が一番だなんて
争うこともしないで
バケツの中誇らしげに
しゃんと胸を張っている

それなのに僕ら人間は
どうしてこうも比べたがる?
一人一人違うのにその中で
一番になりたがる?

困ったように笑いながら
ずっと迷ってる人がいる
頑張って咲いた花はどれも
きれいだから仕方ないね
やっと店から出てきた
その人が抱えていた
色とりどりの花束と
うれしそうな横顔

名前も知らなかったけれど
あの日僕に笑顔をくれた
誰も気付かないような場所で
咲いてた花のように

そうさ僕らは
世界に一つだけの花
一人一人違う種を持つ
その花を咲かせることだけに
一生懸命になればいい

小さな花や大きな花
一つとして同じものはないから
NO.1にならなくてもいい
もともと特別なonly one

今日は曇り空

2003年3月22日
白い紙飛行機
広い空をゆらり
どこへゆくのだろう?
どこにおちるのだろう?

今日は
青空が隠れている
風が吹いてきたよ
風に上手く乗れよ
だけど
あまり強い風は
命取りになるよ

君は
プロペラを知らないのか

雨が降ったら
弱い翼は濡れてしまう

強い雨も風も
笑いながら受けて
楽しく飛ぶことも
悪いコトじゃないよ

だけど
地面に落ちるまで
短い命だね

君は
明日まで飛びたいのかい

白い紙飛行機
どこへゆくのだろう
白い紙飛行機
どこにおちるのだろう

向き合う

2003年3月21日
心が静かだ

今までの
あの怒りがウソのようだ

なぜオレは怒っていたのか
あんなにも何に駆り立てられていたのか

よく思い出せない

オレを見てた
そうだ
あの猫にあってからだ

いや
あいつはただのきっかけで
いつかは誰もが気付くのかもしれない

《漆黒の闇》

何かいる…
見える

今まで目を背け続けていたから気付けなかった

闇の中に
こころの奧に
大昔からこいつはいたんだ

それはまず
僕に質問するはずだ

「ようこそ。君は何者だ?」

僕は僕です
また僕はあなたです
虚無であり死であり
矛盾と呼ばれるものであり
全ての時間と空間であり
問いであり同時に答えです

「少し言葉が多すぎるけど
 そのクセ足りないけど
 まァいいだろう。
 何故ここへ?」

宇宙のことを考えていたらここに来てしまいました

「うん。まあそうだろうな。」

教えて下さい
ここは終点ですか?

「さァどうだかね。
 終点に行きたいのかい?
 始発はどこだった?」

わかりません

「そうか。
 環状線かもしれないぞ。
 レールなどないのかもしれん。」

僕はそこを回り続けるんですか?
永遠に?

「さァね。もう帰りなさい。
 グズグズしてると帰れなくなるぞ。」

帰り方がわかりません
歩く元気もありません

「帰れるさ。
 君は人間で、
 ハチマキで、
 あとタナベが気になる。
 それを思い出せ。」

ちょっと!待っ…

「大体ここは生きたままくるような所じゃない。
 焦らなくても、そのうちこっちから迎えに行くよ。」

帰るって…
どこへ?
どうやって!?

「闇を見ることが出来るのなら
 光を見ることも出来るはずさ。
 呼び名がちがうだけのことだからな。」
戦線から遠のくと
楽観主義が現実にとってかわる。
そして
最高意志決定の段階では
現実なるものは
しばしば存在しない。
戦争に負けているときは特にそう。

始まってますよ、とっくに。
気付くのが遅すぎた。
■後藤さん、警察官として、自衛官として、俺たちが守ろうとしているものってのは何なんだろうな。前の戦争から半世紀、オレもアンタも生まれてこのかた戦争なんてものは経験せずに生きてきた。平和。オレたちが守るべき平和。だが、この国のこの街の平和とは一体なんだ?かつての総力戦とその敗北。米軍の占領政策。ついこの間まで続いていた核抑止による冷戦とその代理戦争。そして今も世界の大半で繰り返されている内戦・民族衝突・武力紛争。そういった無数の戦争によって合成され支えられてきた血まみれの経済的繁栄。それがオレたちの平和の中身だ。戦争への恐怖に基づくなりふり構わぬ平和。正当な対価をよその国の戦争で支払い、そのことから目をそらし続ける不正義の平和。

□そんなきな臭い平和でも、それを守るのがオレたちの仕事さ。不正義の平和だろうと正義の戦争よりよほどマシだ。

■アンタが正義の戦争を嫌うのはようく分かるよ。かつてそれを口にした連中にろくなヤツはいなかったし、その口車に乗ってひどい目に遭った人間のリストで歴史の図書館はいっぱいだから。だが、アンタは知ってるはずだ。正義の戦争と不正義の平和の差はそう明瞭なものじゃない。平和という言葉が嘘つきたちの正義になってから、オレたちはオレたちの平和を信じることができずにいるんだ。戦争が平和を産むように、平和もまた戦争を産む。単に戦争でないというだけの消極的で空疎な平和は、いずれ実体としての戦争によって埋め合わされる。そう思ったことはないか?その成果だけはしっかり受けとっていながら、モニターの向こうに戦争を押し込め、ここが戦線の単なる後方にすぎないことを忘れる、いや忘れたふりをし続ける。そんな欺瞞を続けていれば、いずれは大きな罰が下される。

□罰?誰が下すんだ?神様か?

■この街では誰もが神様みたいなもんさ。いながらにしてその目で見、その手で触れることのできぬあらゆる現実を知る。何一つしない神様だ。神がやらなきゃ人がやる。いずれ分かるさ。

:1993年製作:
電話のベルの音鳴りやむの聞いて
目を覚ました
午後2時過ぎ
雨が降ってる

くしゃくしゃの髪と
くしゃくしゃの手紙
夕べ書いて破り捨てた
夕べ飲んだワインとウイスキーのグラス
吸い殻が溢れた灰皿の側を
猫が歩く

戦争はどうしておわらないのかな
戦争はどうしてなくならないのかな

二日酔いの日には
音楽はいらない
何を聞いても
キライになる
郵便物の束
封を開けて捨てて
お茶を飲んで
午後は終わる
夕べ電話をかけた
新しい恋人
貴女のこと考えて
夜がくるのをただじっと待ってた

戦争は今日も終わらないのかな
戦争はたぶんなくならないのかも

戦争はどうして終わらないのかな
戦争はどうしてなくならないのかな

お金持ちばかりが
集まるお店で
晩ご飯の誘いが来た
夕べ着ていた服は
たぶんもう着ない
新しい服に
着替えて出かける

お金持ちになるのはねえどんな気分なの?
お金持ちのともだちに聞いてみよう

戦争はたぶん終わらないのかな
戦争はたぶんなくならないのかも
戦争はたぶん終わらないのかな
戦争はたぶんなくならないのかも

異物

2003年3月17日
ほんの一部見せただけで
全て読まれたらどうしよう
お前の体に入り込んだ
奴ら何をするんだろう
奴らただの居候だろ?

ほんの一部だけ見せただけで
なにやら淫らなムードで
お前のハート忍び込んだ
今から何されるんだろう

ほんの一部見せただけだけどほら見て
メガネをかけたらよく見えるならそれもいいが
テレビ ラジオ ビデオに本
夜にはすべて思考停止だろ

ほんの一部だけどほら見て
テレビの中じゃ思考停止だろ
お前の体に入り込んだ
わけなく奴ら不戦勝だろ

ほんの一部だけだけどほら見て
メガネをかけたらよく見えるならそれもいいが
とにかく昼間は疲れ切って
夜には全て思考停止だろ

焦り

2003年3月16日
時間が移動する
時間が逃げていく
時間がすりぬける
時間がオレを脅す

夕べそこらで彷徨っていた
はずが、朝には消え去っていた

自分が起動する
自分がずれていゆく
自分がしぼんでる
自分がのびてちぢむ

時間、それは全ての人間に同じように流れているわけではないと思うよ
時間、それは感覚であって、生きたということはただの記憶でしかないって本で読んだ
時間、濃密な時間 複製された大量の時間
時間 時間 時間の大安売り
時間の垂れ流し 時間の売買 時間に追われる 時間に支配される
時間 時間 時間がない
暗闇のなかでただ溺れている

時間がオレを脅す

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