贋・贋作「桜の森の満開の下」
2001年10月3日ーどうしたの?
ー荷台から地獄がおちた
ーなんのこと?
ー下りつづけていくほどに、オレは強くない
ーだめよ、転がるように下っていくって言ったのは、
あなたなのだから
ーさよならの挨拶をして、それから殺して
くださるものよ。あたしも、さよならの挨拶
をして、胸を突き刺していただいたのに。
ーオレもせめて、おわびの一言でも叫んでからと
思ったけれど、なにか、もう、あの、ヒメを見ると、
この、あの…
ーいいの。好きなものは、呪うか殺すか争うか
しなければならないのよ。
ねえ、もしもまた新しく、なにかをつくろう
と思うのなら、いつも、落ちてきそうな広くて
青い空をつるして、いま私を殺したように立派な
仕事をして…
ーーそんなところでじいとして、冷たくはありませんか?
ー花の涯から吹きよせる冷たい風も、もうここにはありません。ただひっそりとそして、
ひそひそと、だけどこれからはいつまでも、
ここで身動きせず、じいっと座っていること
ができます。
ーー桜の森の満開の下に?
それでも行きましょう。
ーー行きはこわいの道しるべ
ーでは、これからが帰りはよいよい?
ーその道しるべには何を刻むの?
ーあっ、その声はヒメ
ーー何を刻むの?
ーこの桜の木の下からどこにもまいらず、
けれどどこにでもいけるおまじない。
いやあ、まいった、まいった。
恋の想い出は、桜の下の満開の下のようで。
じっとしていると怖くて気が狂いそうになる。
でも、じっとそこにいて美しい時間を見ていたい
ようなそんな気に駆られたりする。
「まいった」はそんなときのおまじない。
「まいった」と言うとき、人は本当はまいってなどいない。
むしろ楽しんでいる節さえある。
あのころはまいったよ
あのおんなにはまいったなあ
おまじないをいうことで、恋の時間に戻ることも
未来へ進むこともできる。
そう、帰りはよいよいなのだ、恋は。
ー荷台から地獄がおちた
ーなんのこと?
ー下りつづけていくほどに、オレは強くない
ーだめよ、転がるように下っていくって言ったのは、
あなたなのだから
ーさよならの挨拶をして、それから殺して
くださるものよ。あたしも、さよならの挨拶
をして、胸を突き刺していただいたのに。
ーオレもせめて、おわびの一言でも叫んでからと
思ったけれど、なにか、もう、あの、ヒメを見ると、
この、あの…
ーいいの。好きなものは、呪うか殺すか争うか
しなければならないのよ。
ねえ、もしもまた新しく、なにかをつくろう
と思うのなら、いつも、落ちてきそうな広くて
青い空をつるして、いま私を殺したように立派な
仕事をして…
ーーそんなところでじいとして、冷たくはありませんか?
ー花の涯から吹きよせる冷たい風も、もうここにはありません。ただひっそりとそして、
ひそひそと、だけどこれからはいつまでも、
ここで身動きせず、じいっと座っていること
ができます。
ーー桜の森の満開の下に?
それでも行きましょう。
ーー行きはこわいの道しるべ
ーでは、これからが帰りはよいよい?
ーその道しるべには何を刻むの?
ーあっ、その声はヒメ
ーー何を刻むの?
ーこの桜の木の下からどこにもまいらず、
けれどどこにでもいけるおまじない。
いやあ、まいった、まいった。
恋の想い出は、桜の下の満開の下のようで。
じっとしていると怖くて気が狂いそうになる。
でも、じっとそこにいて美しい時間を見ていたい
ようなそんな気に駆られたりする。
「まいった」はそんなときのおまじない。
「まいった」と言うとき、人は本当はまいってなどいない。
むしろ楽しんでいる節さえある。
あのころはまいったよ
あのおんなにはまいったなあ
おまじないをいうことで、恋の時間に戻ることも
未来へ進むこともできる。
そう、帰りはよいよいなのだ、恋は。
キスグルメ
2001年9月29日舌の上に湧き上がってくる記憶がある。
昨晩の生牡蠣だ。
あの清涼な味が、憶い出し笑いのように
舌の上に拡がってくるのだ。
舌を微かに動かして、あのフックラした身を
なぞってみる。
冷たくて、ひっそりした甘みのあるあの味が
懐かしい。
こんなにも追慕してしまうなんてどうしたのかしら?
それは舌に受けた生理的な衝撃だった。
何かに似ているみたいだなあ、
と考えていて、そうか、思い当たった。
フローズン・ダイキリを飲んだ人とキスした時の、
あの冷たーい、香りのする舌によく似てるんだ。
昨晩の生牡蠣だ。
あの清涼な味が、憶い出し笑いのように
舌の上に拡がってくるのだ。
舌を微かに動かして、あのフックラした身を
なぞってみる。
冷たくて、ひっそりした甘みのあるあの味が
懐かしい。
こんなにも追慕してしまうなんてどうしたのかしら?
それは舌に受けた生理的な衝撃だった。
何かに似ているみたいだなあ、
と考えていて、そうか、思い当たった。
フローズン・ダイキリを飲んだ人とキスした時の、
あの冷たーい、香りのする舌によく似てるんだ。
ハードボイルドな夜
2001年9月28日割って入んなよ、メロウ
オレの中心にお前の居場所はない
寄ってくんなよ、エゴ
オレの中心にお前の居場所はない
そんな感じで、切り落とされ、出たブルース
錠前はひるんだ、ジュビリーだ!
ねぇ、もう、やっちゃえば?
そう、これからさ、どっち向いてんだ?
オレの中心にお前の居場所はない
寄ってくんなよ、エゴ
オレの中心にお前の居場所はない
そんな感じで、切り落とされ、出たブルース
錠前はひるんだ、ジュビリーだ!
ねぇ、もう、やっちゃえば?
そう、これからさ、どっち向いてんだ?
待ってる人によいものは来る。リラックスして運命を待とう。
2001年9月27日ひらきなおり、言うだけの人に、手を振ろう。
ダメだって、良くたって、なんだって、いいんだから、
今は目の前にタネをまいて待とうぜ。
オレだって、誰だって、明日は今日、知れない。
全ての審判は、死ぬ日で充分だ。
ダメだって、良くたって、なんだって、いいんだから、
今は目の前にタネをまいて待とうぜ。
オレだって、誰だって、明日は今日、知れない。
全ての審判は、死ぬ日で充分だ。
深呼吸の方法
2001年9月26日ねぇ、「慣れてきたよ」って、あんたは言うが、
慣れなんて通じないさ、意味分かんない?
あぁ、オレも、ホントの事なんて、
分かりゃしないんだけど、
本来、たつ場所に、君はいる?
あいつらの言う正論は凍りついて、
さぁ、流れ変えてやろうぜ
一生どん臭い理屈掘りよりか、
まぁ、サイズ合った服、着ようって!
慣れなんて通じないさ、意味分かんない?
あぁ、オレも、ホントの事なんて、
分かりゃしないんだけど、
本来、たつ場所に、君はいる?
あいつらの言う正論は凍りついて、
さぁ、流れ変えてやろうぜ
一生どん臭い理屈掘りよりか、
まぁ、サイズ合った服、着ようって!
強度
2001年9月25日「つまらねぇ」。そんな気分に呑まれちゃって、
つまんねぇヤローになんないで。
合わせてばっかいんな。
いっつも息を殺して…
一人でも行くんだ。
あんたに言ってんだ。
知ったようなこと聞こえてくる中、
重度の疲れ混ぜて、
陽の光浴びんだ。
眩しけりゃ、手、かざし…
泣いてられるスキもない頃の僕とね、
今、この黒い世紀を威風堂々と渡るよ。
つまんねぇヤローになんないで。
合わせてばっかいんな。
いっつも息を殺して…
一人でも行くんだ。
あんたに言ってんだ。
知ったようなこと聞こえてくる中、
重度の疲れ混ぜて、
陽の光浴びんだ。
眩しけりゃ、手、かざし…
泣いてられるスキもない頃の僕とね、
今、この黒い世紀を威風堂々と渡るよ。
神経症とは
2001年9月24日ひりひりした 毎日
刺激 奇跡のような 毎日
刺激
奇跡のような ひりひりした
毎日 不安
しりめりれつな
痛み
実際 退屈すら
お喋り 雑踏 朝のラッシュ 交差点
どこであろうと
耳鳴り
流れる 毎日
熱を持つ 蒸発する 気体になる
近頃の落ち方 欲望
誰かあたしを止めて
刺激 奇跡のような 毎日
刺激
奇跡のような ひりひりした
毎日 不安
しりめりれつな
痛み
実際 退屈すら
お喋り 雑踏 朝のラッシュ 交差点
どこであろうと
耳鳴り
流れる 毎日
熱を持つ 蒸発する 気体になる
近頃の落ち方 欲望
誰かあたしを止めて
傷秋
2001年9月23日私が目ざめると
花がこくりうなづき
ノートが 白い顔の枕元
そばにいた人の 姿もない
昨日が 今日になっただけなのに
さあ これからどこへ行こう
ふきげんな空は 雨模様なのです
花びんに つめたさと朝を
束ねて たっぷり そそぎこむ
私に鏡をうつして 充分たしかめ
クルリまわって 外へ出た
さあ これからどこへ行こう
ふきげんな空は 雨模様なのです
花がこくりうなづき
ノートが 白い顔の枕元
そばにいた人の 姿もない
昨日が 今日になっただけなのに
さあ これからどこへ行こう
ふきげんな空は 雨模様なのです
花びんに つめたさと朝を
束ねて たっぷり そそぎこむ
私に鏡をうつして 充分たしかめ
クルリまわって 外へ出た
さあ これからどこへ行こう
ふきげんな空は 雨模様なのです
素の顔
2001年9月21日あのね、パッっと、素の顔になるとこを見てまうんですよ。
普通に笑いながら喋ってくれても、
向こう行く時に、パッと一瞬素の顔になるじゃないですか、
振り返るちょい前くらいに。
だから僕、客商売の店とかもあかんのです。
こっちが一生懸命喋ってても、なんか作業してる
じゃないですか。
ああいうのが、もう、あかん。
「こいつ俺の話100%聞いてない」って思うんですよ。
そうやってすべてに100%求めて裏切られる
そういうのは、ちっちゃい頃からずーっとありましたねえ。
普通に笑いながら喋ってくれても、
向こう行く時に、パッと一瞬素の顔になるじゃないですか、
振り返るちょい前くらいに。
だから僕、客商売の店とかもあかんのです。
こっちが一生懸命喋ってても、なんか作業してる
じゃないですか。
ああいうのが、もう、あかん。
「こいつ俺の話100%聞いてない」って思うんですよ。
そうやってすべてに100%求めて裏切られる
そういうのは、ちっちゃい頃からずーっとありましたねえ。
今日が明日の前日だから、怖くて仕方がないんだ。
2001年9月20日ぼくの
何もかもが
イヤになった 日曜の午後 二時半過ぎ
年を取って
ずるい顔になって
ただ ひどく くたびれている
鏡の中のありふれた男
バスルームに
鍵をかけたままで
もう誰もぼくに逢えない
これでさようなら
ひげを剃り終えた
ありふれた男
ありふれた話
ありふれた日曜の午後
何もかもが
イヤになった 日曜の午後 二時半過ぎ
年を取って
ずるい顔になって
ただ ひどく くたびれている
鏡の中のありふれた男
バスルームに
鍵をかけたままで
もう誰もぼくに逢えない
これでさようなら
ひげを剃り終えた
ありふれた男
ありふれた話
ありふれた日曜の午後
大人になると名前のつけられない関係が増えていく。
2001年9月19日これは恋ではなくてただの痛み
ふたり
まるで恋人のようなふたり
そして
とてもつかれてるふたり
愛しているとひとことだけ
愛しているといえないなんて
君は天使じゃなくてただの娘
世界中の全ての哀しみを知ってしまった恋人達に
ふたり
まるで恋人のようなふたり
そして
とてもつかれてるふたり
愛しているとひとことだけ
愛しているといえないなんて
君は天使じゃなくてただの娘
世界中の全ての哀しみを知ってしまった恋人達に
キスは甘いだけではない。
2001年9月18日恋人達の幸福の協調が
人知れず腐ってゆく
止めることができる者は誰もいない
ただ待つしかない
終わりを
潮時を
きっかけを
わたしは あなたを
もうはじめの日のようには愛していない
わたしは もう
あなたを愛していない
愛しているフリにつかれた
ふたりとも煙草の切れし長い夜かな
人知れず腐ってゆく
止めることができる者は誰もいない
ただ待つしかない
終わりを
潮時を
きっかけを
わたしは あなたを
もうはじめの日のようには愛していない
わたしは もう
あなたを愛していない
愛しているフリにつかれた
ふたりとも煙草の切れし長い夜かな
冷たいのと熱いの
2001年9月17日愛してるって言えないなんて
愛してないのと同じだと思う
あんなにいつでもキスしているくせに
あんなにどこでもベタベタするくせに
くちづけはどっちが好き?
冷たいのと熱いの
冷たいのが好きなら
冷たくしてあげるから
冷たいのが好きでしょ
冷たいのが好きでしょ
愛してるって言えないなんて
愛してない証拠よ、そうでしょ
お仕置きはどっちにする?
冷たいのと熱いの
冷たいのが好きなら
冷たくしてあげるから
冷たいのが好きでしょ
冷たいのが好きでしょ
愛してないのと同じだと思う
あんなにいつでもキスしているくせに
あんなにどこでもベタベタするくせに
くちづけはどっちが好き?
冷たいのと熱いの
冷たいのが好きなら
冷たくしてあげるから
冷たいのが好きでしょ
冷たいのが好きでしょ
愛してるって言えないなんて
愛してない証拠よ、そうでしょ
お仕置きはどっちにする?
冷たいのと熱いの
冷たいのが好きなら
冷たくしてあげるから
冷たいのが好きでしょ
冷たいのが好きでしょ
ちょっとした悪戯
2001年9月16日「この扉を絶対に開けてはいけません。
この扉の向こうは、青い海です。」
エスカレーターで昇ると、
そう張り紙をされたドア。
13階のドアの向こうに海があるとも思えないが、
ここはもしかしたら異世界への入り口だろうか?
ドアのノブに手をかけてみる。
しっくりとなじむ。
扉がゆっくりと開いていく。
扉の向こうでは、
黒い大理石の床に
八角と夜久貝がひっそりと息をひそめていた。
きらめく星と銀河
青い海も見えるようだ
そこにあったのは、海と宇宙だった。
この扉の向こうは、青い海です。」
エスカレーターで昇ると、
そう張り紙をされたドア。
13階のドアの向こうに海があるとも思えないが、
ここはもしかしたら異世界への入り口だろうか?
ドアのノブに手をかけてみる。
しっくりとなじむ。
扉がゆっくりと開いていく。
扉の向こうでは、
黒い大理石の床に
八角と夜久貝がひっそりと息をひそめていた。
きらめく星と銀河
青い海も見えるようだ
そこにあったのは、海と宇宙だった。
ちょっと唇を尖らせて
2001年9月15日彼はしらんぷりして、わざと私の机の上に座る
わざと私に触れる
夜の窓ごしに写った私の目をわざとじっと見つめたりする
その度に
赤くなったり、緊張したりする私を見るのが
彼は愉しくて仕方ないのだ
でも
私はこの情けないゲームが好きだ
ゲームが続けばいい
彼は私にとっては底が知れてはこまる男性だった
単なる私のエゴなのは分かっている
多分ほんとうのこと
何もいわないで私たちは終わるだろう
でも、
ずっとこのままでいたいと思ったこと
くやしいけどいつまでも忘れないだろう
いつまでも
わざと私に触れる
夜の窓ごしに写った私の目をわざとじっと見つめたりする
その度に
赤くなったり、緊張したりする私を見るのが
彼は愉しくて仕方ないのだ
でも
私はこの情けないゲームが好きだ
ゲームが続けばいい
彼は私にとっては底が知れてはこまる男性だった
単なる私のエゴなのは分かっている
多分ほんとうのこと
何もいわないで私たちは終わるだろう
でも、
ずっとこのままでいたいと思ったこと
くやしいけどいつまでも忘れないだろう
いつまでも