■年寄りは、世間の気遣いで自分が老人になったことをいやという程、意識するんだ。
 世間が年寄りを骨の髄まで年寄りにしちまうのさ。
 そして、しまいには本当に老いぼれちまうのさ。
 俺も来年、定年だ。
 この標示を見る度に、俺も勘兵衛さんみたいに違う世界に吸い込まれそうになる。
 「お前はもう年だ。あとは世間の同情と哀れみで生きていくだけ。燃え尽きるのをじっと待つだけ」・・・

□あなた方は、年をとることがそんなにつらいのかね。怖いのかね。

■じゃあ、あんたはどうなんだい?

□確かに怖くないと言えば嘘になる。
 しかし、私には、まだまだ学ぶことが山ほどある。
 私のやることに終わりはない。
 やればやるほど無限大に広がっていく。

 勘兵衛さんには何があるのかね?

◇わしか。わしにはこのバスがあるぞ。
 このバスがわしの…すべてじゃ

■あなたは残酷な人だねえ。せっかく老人が夢を見ているのに

□しかし私は、勘兵衛さんは何かを見つけるべきだと思う。
 彼には、何も見ずにただ生きていてほしくはない。

■お客さん、眠そうだね。
 その何かを掴めるヤツなんてほんの一握りさ。
 あんたには持てない者の気持ちなど分かるまい。

 本当に眠そうだよ。お客さん。
 夢を見ていた方が楽だよ。

□いや、私は眠くない。

■寝ちまった方が残りの人生楽しくなるよ。

□私は眠らないっ!!

確かに、私には持てない者の気持ちは分からない。
しかし、それは持てないのではなく、
持とうとしないのだ…と信じたい。
老耄がそれらをすべて奪い去ってしまうなどと私は信じたくない。
現実の中で学ぶこと…
楽しむこと…
勘兵衛さんにもそれを知って欲しかった。

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