ぼくのまちに
白夜がやってきた

巨大なバケツが逆さまに落ちてきて
まちを覆ったんだ

まちの天井
つまりバケツの底を
ひとびとは空と呼んだ

まちに
閉所恐怖症の男がいた

かれは「ここから出たい」と叫び
空に向けてピストルを放った
天井で金属音
その瞬間
空にはじめて星が誕生した
六等星くらいの青い星

「太陽をつくろう」とだれかが言い出した
まちじゅうの打ち上げ花火が集められ
束ねて空に向けられた

3、2,1

バケツの中でその音は
何十倍にも反響し
ひとびとの鼓膜を破った

やがて
空は粉々に砕け
ひとびとの上に降り注ぎ
ゆっくりと
ぼくたちの目を傷つけた

白夜が終わった

きっと頭上には本物の空があるのだろう
でもだれもそれを空とは呼ばない
ぼくたちは最後に見たんだ
空が壊れていくところを

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

この日記について

日記内を検索