エロス

2002年10月13日
眠れずに
そっと庭に出た

夜の冷たさが
ひたりと足裏にはりつく

波打つように
列車の音が遠ざかる

一房の葡萄に
そっと手を伸ばす

つやつやふとった
蒼い葡萄の実

口に含んでしきりに潰す

つめたく
あまく
やわらかい

月の光照らすそれは
まるで
小さな地球のようだった

一粒掌にのせ
よく見るとその上を
一筋の川が流れていた

川だと思ったら
それは連なる人の群れだった

渇いた砂の上を彷徨う民の群れ

掌に
大地の海がのっかかる
葡萄が一粒
口に含む

それはとても

つめたく
あまく
やわらかかった

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