玉井さん その3

2001年12月14日
 私が勉めている印刷会社は、体育会系で、
 朝礼が始まる5分前にラジオ体操の音楽が流れる。
 その上さらに、30分前から会議があるのだ。
 おかげで、毎朝家を出るのは、6時40分。
 駅から7,8分くらいの私の近所にはほとんど人通りがない。
 そこを早足で駅まで急ぐ。
 玉井さんは、いつものようにカラスよけの網の外に
 捨てられたゴミを中に入れて、ゴミ置き場の周りを
 掃いている。
 そして、玉井と書かれたちりとりにきれいにおさめる。
 「おはようございます。」
 「いってらっしゃい。」
 今日もひとつ儀式がおわった。
 多摩川は毎日色を変える。雲も形を変える。草の長さも変わる。
 晴れていると遠く富士山が見える。
 またひとつ儀式が終わる。
 ふと、そこに川沿いに住んでいる人々の   
 「家」があるのがわかる。
 ダンボールとゴミ袋、傘やなにかがちらっと目の端をかすめる。
 可哀相なのかたくましいのか、感想を述べる権利は私にはない。
 ただ、おなじ世界を生きている。
 彼らも、玉井さんも、私も、これから会う職場の人も。

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