人生とは、諸君、退屈なものだ。だがそれを言ってはいけない。
何しろ空はきらめき、大いなる海は思い焦がれ、
ぼくら自身もきらめき焦がれ、
その上、子どものころ母さんから(何度も何度も)
聞かされたが、「仮にも退屈を認めるというのは、
自分に何も

才覚がないということ」。してみると、ぼくには何も
才覚がないらしい、死ぬほど退屈だから。
どこの国の人間も退屈、
文学も退屈(とくに大文学が)、
ヘンリーも退屈―いつもアキレスみたいな苦境に立って、
不平たらたら。

人々を愛し、立派な芸術を愛し―それがまた退屈だ。
そして静かな丘も、ジンも、およそ退屈に見え、
なぜか一匹の犬が
自分と尻尾をはるかに遠い遠い
山か海か空へ運んでいってしまい、あとには
おどけ者の、ぼくひとり、ぴくぴく。

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