今日と昨日の識別も最早つかない混乱が続いた。
 僕は時々上を見上げて深くじっと考えてみる。
 すると僕の考えが、急に僕の額から煙のように
 逃げ出していく、
 僕は空洞(からっぽ)のなかに、憔悴した僕の頬を、
 そればかり目瞼一杯に移してしまう。
 それでいて、僕の毎日は不思議に鋭く緊張していた。
 誰人の意志が又何故にこの不思議な緊張を
 かくまで僕に強うるのか、
 それを僕は知ることが出来なかった。
 知りうることは、僕の意志ではこの緊張を
 どうすることも出来はしないということばかり、
 僕はただ、日毎に強く張り切ってゆく、
 不思議に休むときもない振幅を感じ続けてばかりいた。
 やがて或日、その緊張に極点が来て止む無く
 緊張それ自身破裂せしめる時がある、
 そのとき僕はどう成って何処へ行くのか、
 それも僕には分からない。
 僕は毎日怒ったような、
 妙に切迫した怖い顔を結んで、
 極く希に、ふとしたはずみでしか
 笑い出すことが出来なかった。

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