ヨハネ 断章 その4

2001年11月17日
 父ゼベダイは、漁師だったが、子供のような人だった。
 母サロメは、また、少女のようなはかない人で
 私が生まれてすぐ亡くなった。
 以後、残された父と兄、私は、母の死の影で
 バランスを失った。
 子供のように主張する父と
 父のように君臨する兄。
 私は、母に似ていると言われた。
 漁師として生活せざるをえなかったが、
 水飛沫の美しさに哀しみを感じ涙する
 そんな一面を持っていた。
 それを兄は、軟弱のひとことでかたづけた。
 人間に必要なのは強い明日への意志、
 そしてそれに必要な忍耐力だと何度も唱えた。
 兄の激しさは、私の冷笑をかったにすぎない。
 彼の空回りは私の笑いだねだった。
 ただ、ひとへの憎しみは
 そのままみずからにかえってくるものだ。
 私は、自身を深く、深く、愛し憎んでいた。

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