いかにもその場限りの戯曲という風の設定に
負けていない鏡が一つ。

鏡:雪のように色が白く、墨のように黒い髪
  加えて、林檎のように愛らしい頬なんて
  わがままな願いを殊勝にも聞き入れられて
  生まれ育った白雪姫。
  実は、僕は毎日、姫の継母、
  世が世になっちゃって今は王妃なんか
  になってるおばさんの

  (王妃オフ台詞)
   鏡よ、鏡よ、鏡さん。この世で一番…

  (さえぎるように)
  なんて必死のモーションにもなびかず、
  ただ、ひたすらに、
  姫を想い続けてるんです。

手鏡:あんた、まだあの娘が好きなの?
鏡:ああ、手鏡、いたのか。
  君はどこにでも持ち歩いてもらえていいねえ。
手鏡:ふふふ。
   それより、今日は情報があんのよ。
   あんたのことよ。
鏡:三面記事にでも載ったのか?
  「王室の一室にある顔がでかすぎ不器量な
   鏡が次期国王に立候補!!こともあろうに、
   かの白雪姫と電撃結婚!!!」
   なんて。
手鏡:んなわきゃーない。あんたの名前よ。
   グ・リ・ムさん。
鏡:なんだそりゃ。
  なんで僕の知らない僕を知ってるんだあ。
手鏡:だって、ほら、私たち、
   閉じられた三面鏡の関係にあるじゃない。
   鏡を写す鏡。その中で思いがけない
   三面記事を見つけたってわけ。
鏡:閉じられた?近すぎて良く見えないなあ。
手鏡:あんたの姿が私に写ってきたの。
   あんたは、これから目覚めるのよ。
   そして、何も写せなくなる。
鏡:何も!?
手鏡:さてと。お給料分の仕事はしたからね。
   おまけをつけると、
   また、王妃が今度は林檎で姫を殺そう
   としてるわ。
   (手鏡退場)

鏡:おい!もっとちゃんと教えろよ!おい!
  ……なんて言ってた?
  僕はグリムで……
  「グリム」っていえば、国王が僕に教えた
  例の国家機密にもそんな言葉がでてきたっけ。

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