夜の果て

2001年8月31日
 彼といると時折、「夜の果て」
 を見てしまうことがあった。
 私にとってそれは、これまでに見たことのない
 光景だった。
 最中のことではない。
 最中はただ2人の間にはなんのすき間もなく、
 心がさまようこともない。
 彼はセックスの最中に何もしゃべらない人なので、
 あんまりそうなので、
 私はふざけていろいろなことを言わせようとするけれど、
 本当は黙っていることがとても好きだった。

 何だか彼を通して巨大な夜と寝ているような気がする。
 言葉がないぶん、彼本人よりももっと深いところにある
 本当の彼を丸ごと抱いているような気がする。
 そこが大きなホテルであっても、
 駅の裏にあるような安宿でも変わりはない。
 真夜中に、何だか雨や風の音が聞こえる気がして、
 ふと目が覚める。
 ふととなりを見ると彼がぱっちり目を開けている。
 私はなぜか言葉を失くして、
 黙ってその目をのぞきこむ。
 なぜ、この人といるとこんなに寂しいのか。
 2人の間にある複雑な事情のせいかもしれないし、
 私が2人のことに関して好きという気持ち以外の何も、
 どうしたいというはっきりした気持ちを持っていない
 からなのかもしれない。
 ただ、ひとつ、ずっとわかっていることは、
 この恋が寂しさに支えられているということだけだ。
 この光るように孤独な闇の中に
 2人でひっそりといることの、
 じんとしびれるような心地から
 立ち上がれずにいるのだ。
 そこが、夜の果てだ。

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